【展覧会レポート】モネ それからの100年 名古屋市美術館

http://www.art-museum.city.nagoya.jp/monet

 

名古屋市美術館展覧会「モネ それからの100年」を見てまいりました。

 

モネは、私の浅薄な美術人生の中で、大きなインプレッション(印象)を残した作家です。

すこし、昔話を聞いてください。

 

私にとってのモネ作品との衝撃的な出会いは11年前、国立新美術館開館記念「大回顧展モネ 印象派の巨匠、その遺産」まで遡ります。

国立新美術館が開館して、もう11年にもなるんですね。

 

あの展覧会はとても衝撃的で、そのとき私はモネが大嫌いになりました。

というのも、まだ美術を専攻して日が浅く、2007年ゴールデンウィークに、大学の課題でモネ展を取り上げて鑑賞に行ったところ、入場待機列ができるほどの大混雑で、人の列は作品の前から動かないし、チビの私は見えないし、作品数は多いし、なんだか似たような作品ばかりだし。

今思えば、珠玉の作品群が展示してあったのですが、まだ鑑賞の眼差しが育っていない私にとっては大変苦痛で、モネの良さが分からなかった。モネだけでなく、ピカソカンディンスキーもクレーも、近代以降の作品への強い拒否反応があったんです。

 

それを恩師が叱ってくれました。「お前はモネの作品を、いくつ見たんだ。モネは多作の作家で、その作品のうちの数展を見ただけで判断するのは結論を急ぎすぎている。100点以上作品と向き合い、よく吟味する必要がある」と。

言われた私は、恥ずかしさと悔しさと、持ち前の負けん気で、それ以来近代以降の作品と強く向き合うようになりました。

 

それから、「モネが好きだな」と思えるようになるまでには、2007年国立新美術館のモネ展以降8〜9年かかったように思います。その間、国立西洋美術館の常設展の睡蓮や、ブリジストン美術館、ポーラ美術館など、たくさんの美術館でモネと向き合いました。幸せなことに、日本では印象派作品を沢山見る事が出来ますからね。

 

モネ以外の近代絵画や現代アートも、なるべく食わず嫌いをしないように心がけながら、展覧会会場で作品から逃げ出さないようにしてきました。

(学生という身分は、勉強をするには大変有効な立場で、現職の学芸員さんたちにお会いし、話を聞く機会を沢山設けてもらえます。私は金沢21世紀美術館学芸員さんにかけてもらった魔法の言葉で、現代アートを克服したけど、それはまたいつかお話しましょう。)

 

モネに関して克服の鍵となったのは、英BBCのドラマ「印象派若き日のモネと巨匠たち」を見て、モネの業績と絵画感を(好みのイケ渋俳優リチャード・アーミティッジの熱演を通して)知る事が出来た事です。

おそらく、これまで作品を見て目が肥えた経験と重ねて、モネを理解する事が出来たんだと思います。そこまで踏み込めば、嫌よ嫌よも好きのうち、というか、いつのまにか嫌いなアイツが気になるあの子に変わっちゃう、といいますか。

 

 

 

今日見てきた名古屋市美術館の展示では、モネの秀作が多数見れて、大変感動しました。

セクションを忘れてしまいましたが、《セーヌ川の日没、冬》《ジヴェルニーの積みわら、夕日》《霧の中の太陽》などが飾ってある部屋は至高の空間で、近くで見た時の筆致の躍動感、遠くから見た時の絵の雰囲気が、たまらなく美しく、しばらくぼうっと見ておりました。

ゆっくり見ているうちに、近くでは見えなかった多彩な色数や繊細な陰影を感じる事ができ、感銘を受けました。

 

いつぞや、嫌いになってしまったモネを、現在、自分主観の見方ではありますが、実に深く楽しく味わえるようになったのは、とても大きな手応えのように感じます。

 

また、この展覧会はモネ作品が1/4くらい、残りはモネに影響を受けたり、モネを意識したり、モネ作品オマージュの、国内外の作家たちの作品です。

 

個人的にお会いできて嬉しかったのは、マーク・ロスコの絵画。マーク・ロスコも苦手な部類でしたが、今ならあの深淵に引き込まれるような静謐の作品に身を委ねて鑑賞する事ができます。

 

これも、作家さんからロスコ作品の見方のヒントをもらっており、「ロスコは油絵の具をグレーズ技法を駆使して描いており、あの四角の中には何層も何層もの絵の具が重なっている」という話を聞いていたので、それを確かめるために実際にお会いする機会に恵まれたのは好機でした。

 

今日は、友人と一緒に展示を見ました。

友人は音声ガイド(ナレーター:櫻井孝宏)を聞きながらも、「ロスコの作品は磯辺餅に見える」なんて私の軽口に付き合ってくれました。

作品と距離を詰めた結果、こんなふざけた鑑賞しかできなくなってしまった私ですが、一緒に見てくれる友人がそばにいる事をとても嬉しく思います。

 

睡蓮のポーズにまで付き合ってくれる友達、マジpriceless!!!

 

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