新藤五国光の刀

新藤五国光(しんとうご・くにみつ)は、鎌倉時代後期の相模国(現在の神奈川県)の刀工です。

鎌倉幕府のお膝元で作られ、その刀の特徴を持つものを「相州伝」とか「相州物」という言い方をしますが、新藤五国光はその最初の人・鎌倉鍛冶の祖と伝わります。

 

最近、縁があり新藤五国光について勉強しており、奇しくも新藤五国光の短刀を見せてもらう機会があったため、今回のテーマに選びました。

 

新藤五国光のキーポイントは「凛とした佇まい」。

粟田口(国綱)の作風を踏襲する、小板目がよく詰んだ美しい地鉄なんだけど、

刃文が違う。

粟田口のはんなりとした直刃よりも、新藤五国光は沸が強いキリッとした印象の刃を焼きます。

粟田口よりも焼きが強いそうです。

 

 

相州物は新藤五国光のみならず、貞宗や大進房などにも共通しますが、

密教や修験と深いかかわりがあります。

相州の刀は、守護の祈りの表現であるといいます。例えば

(1)蒙古からくる敵を退散させる、国家安泰の祈り

(2)不動明王のようにただそこにいて目を光らせて悪を遠ざける、武士の祈り

など。

  

私は日本刀を理解するときに「命を殺めるための刀」という用途よりも、

「お守り刀」というほうが、日本刀の存在意義や役割として、尊いものがあると思っています。

その点相州の刀は、守りたいという祈りが込められており、

なんとも美しく気高い魅力のある刀だろう、と感じ入ってしまうのです。

 

先ほどの粟田口と比べるなら、

粟田口の短刀が優雅な上品さをたたえているとしたら、

新藤五国光の短刀は凛とした美しさとでも言いましょうか。

新藤五国光の覚悟に満ちた凛とした緊張感や強さを、

ちゃんと見て感じ取れるようになりたいなぁ、と思います。