【展覧会レポート】兼定 刀都・関の名工 岐阜県博物館

先日、岐阜県博物館の展覧会「兼定 刀都・関の名工」へ行ってまいりました。 

道中は、刀のおじ様の先輩たちと、楽しゅうございました!!!

 

のさだちゃんを、こんなに多数並べて見るのは初めてで、大変眼福でございました。

展示はおおむね制作年代順になっており、初期の片手打ちの祐定とかと似た形から、だんだんゴッツリしていく過程が非常に分かりやすかったです。

 

特に興味深かったのは、地鉄の様子が初期と晩年で結構違うという事。

展示の前半の作品は、随分鉄がよくお肌ツルツルで感動したけど、後半は白け映りみたいのがべっとりしてて、ニュアンスが変わってくるんですよね。

素材が変わったのかな???

 

あと、のたれぐのめの刃文が、結構高低差があり、特に谷が深くて足もよく入る様が印象的でした。

これまで見たことあるのさだは3本だけだったけど、そのうち2本はのたれぐのめのリズミカルな刃文。

それが割とスタンダードタイプである事も分かりました。最高にキュートな刃文だと思います。のさだは刃文がキュート。

 

のたれぐのめのリズムが良くて、小粋な小沸がツブツブついて、手に持ったらきっといつまでも見ていられる魅力的な刃文。
光に透かしたら、ブワッと刃縁が光って、心が躍るんだろうな。

 

もちろん、直刃とか丁子っぽい子とかも居ましたよ。

ただ、どれも共通して言えるのは、刃が明るく冴えて、大変見応えのある刀たちでした。

のさだは名工である、というのが実に良く分かりました。

 

定期ツイートで「展覧会でお気に入りを見つけろ」と言ってるので、今日は私が展示を見たお気に入りを紹介します。

もし、「1本持って帰っていい」と言われたら、この子をお持ち帰りします。のさだの短刀。腰刃にぐのめをぐのぐの2個焼いて、直刃。お品の良い内反りと2本樋。映りもあり見所が多い。

この子にセットのあじろ編みの拵えが、また素晴らしかった。加藤清正…かな、由来のある拵えで、戦国期の美意識を垣間見る、良い1作でした。

f:id:museology-tan:20180526222450j:image

f:id:museology-tan:20180526222545j:image

 

実は、6月にももう一度兼定展に行く予定があるんですよね。

今日はおじ様ペースでゆっくり見れなかったから、次に行った時にもう一度ジロジロ見てきます。

6月にも兼定展に行く予定があったにもかかわらず、5月に一度行ったのは5月末まで拵えの展示がやってるから!!

 

f:id:museology-tan:20180526222813j:image

 

岐阜県博物館では、5/27まで現代の刀装具職方の展示もやってます。
そこで、我が本命歌仙拵も見れましたよ。影蝶の鍔、なた豆の目貫、ふすべ皮の柄巻き、総鮫の鞘!!
鮫ちゃんの鞘、親粒がどこにあったか確認してこなかったのが、ちょっと心残り。f:id:museology-tan:20180526222959j:imagef:id:museology-tan:20180526222851j:imagef:id:museology-tan:20180526222859j:imagef:id:museology-tan:20180526222829j:image

 

 

それから、ミュージアム梯子して、関鍛治伝承館の展覧会「美濃の名工 兼元 名高き孫六三本杉」も拝見してきました!
車を出してくれる人がいるって、素晴らしい!!!🚙

 

f:id:museology-tan:20180526223103j:image


何気に岐阜県博物館のアクセスが悪くて、この二つを公共交通機関で梯子しようと思うと、ちょっと難しい気がするんだな。。。

 

小声(しかし、先にのさだの明るく冴えたリズミカルな刃文をさんざん見たあとだと…三本杉が単調で少々物足りなく見えてしまう不思議。のさだが良すぎちゃうのか、そもそも歌仙への愛情がカンストしてるから、色眼鏡がかかってるのか…。それとも、展示3本目で疲れてたのか…。)

 

兼元も好きなんですよ。三本杉分かりやすすぎて!!!美術屋視点で見ると、初心者がはじめて持つエントリーモデルにもってこいの刀だと思うんです。名前も知ってるし、刃文も分かりやすいし。

長い三本杉の刀を1本持ってたら、刀の解説しやすいだろうなぁ。

 

 

最後に、濃州堂さんの工房へ遊びに行ってきました。一緒に行ったおじ様が刀の変え鞘を探すのに、同行。工房内も少しだけ覗かせていただきました。

あとは2階の真剣を売ってるギャラリー。先刻見てきた兼元とかが売ってました。金銭感覚狂ってくるから、「30万なら買えるかな?」って麻痺してきます笑

 

f:id:museology-tan:20180526223329j:imagef:id:museology-tan:20180526223330j:image

 

濃州堂さんの居合刀カタログは、夜眠れなくなる魔法の本。

昨年、居合刀をオーダーする時に「どれにしよっかなーーー??」ってベッドの中でカタログ見てると、気がつくと夜中の2時くらいになってる。魔力が高すぎる楽しい本。

 

でも、このカタログだと、影蝶の鍔やよいナタ豆の目貫がないから、歌仙拵を再現できないんだよなー。

ところで、コスプレ用に「歌仙兼定」って売ってる刀は、なぜ鞘が紫なの???全然歌仙拵じゃなくて「解せぬ」ってなる。

でも、このカタログだと、影蝶の鍔やよいナタ豆の目貫がないから、歌仙拵を再現できないんだよなー。

ところで、コスプレ用に「歌仙兼定」って売ってる刀は、なぜ鞘が紫なの???全然歌仙拵じゃなくて「解せぬ」ってなる。

 

以上、関日本刀眼福旅行の感想でした(^∇^)

【展覧会レポート】モネ それからの100年 名古屋市美術館

http://www.art-museum.city.nagoya.jp/monet

 

名古屋市美術館展覧会「モネ それからの100年」を見てまいりました。

 

モネは、私の浅薄な美術人生の中で、大きなインプレッション(印象)を残した作家です。

すこし、昔話を聞いてください。

 

私にとってのモネ作品との衝撃的な出会いは11年前、国立新美術館開館記念「大回顧展モネ 印象派の巨匠、その遺産」まで遡ります。

国立新美術館が開館して、もう11年にもなるんですね。

 

あの展覧会はとても衝撃的で、そのとき私はモネが大嫌いになりました。

というのも、まだ美術を専攻して日が浅く、2007年ゴールデンウィークに、大学の課題でモネ展を取り上げて鑑賞に行ったところ、入場待機列ができるほどの大混雑で、人の列は作品の前から動かないし、チビの私は見えないし、作品数は多いし、なんだか似たような作品ばかりだし。

今思えば、珠玉の作品群が展示してあったのですが、まだ鑑賞の眼差しが育っていない私にとっては大変苦痛で、モネの良さが分からなかった。モネだけでなく、ピカソカンディンスキーもクレーも、近代以降の作品への強い拒否反応があったんです。

 

それを恩師が叱ってくれました。「お前はモネの作品を、いくつ見たんだ。モネは多作の作家で、その作品のうちの数展を見ただけで判断するのは結論を急ぎすぎている。100点以上作品と向き合い、よく吟味する必要がある」と。

言われた私は、恥ずかしさと悔しさと、持ち前の負けん気で、それ以来近代以降の作品と強く向き合うようになりました。

 

それから、「モネが好きだな」と思えるようになるまでには、2007年国立新美術館のモネ展以降8〜9年かかったように思います。その間、国立西洋美術館の常設展の睡蓮や、ブリジストン美術館、ポーラ美術館など、たくさんの美術館でモネと向き合いました。幸せなことに、日本では印象派作品を沢山見る事が出来ますからね。

 

モネ以外の近代絵画や現代アートも、なるべく食わず嫌いをしないように心がけながら、展覧会会場で作品から逃げ出さないようにしてきました。

(学生という身分は、勉強をするには大変有効な立場で、現職の学芸員さんたちにお会いし、話を聞く機会を沢山設けてもらえます。私は金沢21世紀美術館学芸員さんにかけてもらった魔法の言葉で、現代アートを克服したけど、それはまたいつかお話しましょう。)

 

モネに関して克服の鍵となったのは、英BBCのドラマ「印象派若き日のモネと巨匠たち」を見て、モネの業績と絵画感を(好みのイケ渋俳優リチャード・アーミティッジの熱演を通して)知る事が出来た事です。

おそらく、これまで作品を見て目が肥えた経験と重ねて、モネを理解する事が出来たんだと思います。そこまで踏み込めば、嫌よ嫌よも好きのうち、というか、いつのまにか嫌いなアイツが気になるあの子に変わっちゃう、といいますか。

 

 

 

今日見てきた名古屋市美術館の展示では、モネの秀作が多数見れて、大変感動しました。

セクションを忘れてしまいましたが、《セーヌ川の日没、冬》《ジヴェルニーの積みわら、夕日》《霧の中の太陽》などが飾ってある部屋は至高の空間で、近くで見た時の筆致の躍動感、遠くから見た時の絵の雰囲気が、たまらなく美しく、しばらくぼうっと見ておりました。

ゆっくり見ているうちに、近くでは見えなかった多彩な色数や繊細な陰影を感じる事ができ、感銘を受けました。

 

いつぞや、嫌いになってしまったモネを、現在、自分主観の見方ではありますが、実に深く楽しく味わえるようになったのは、とても大きな手応えのように感じます。

 

また、この展覧会はモネ作品が1/4くらい、残りはモネに影響を受けたり、モネを意識したり、モネ作品オマージュの、国内外の作家たちの作品です。

 

個人的にお会いできて嬉しかったのは、マーク・ロスコの絵画。マーク・ロスコも苦手な部類でしたが、今ならあの深淵に引き込まれるような静謐の作品に身を委ねて鑑賞する事ができます。

 

これも、作家さんからロスコ作品の見方のヒントをもらっており、「ロスコは油絵の具をグレーズ技法を駆使して描いており、あの四角の中には何層も何層もの絵の具が重なっている」という話を聞いていたので、それを確かめるために実際にお会いする機会に恵まれたのは好機でした。

 

今日は、友人と一緒に展示を見ました。

友人は音声ガイド(ナレーター:櫻井孝宏)を聞きながらも、「ロスコの作品は磯辺餅に見える」なんて私の軽口に付き合ってくれました。

作品と距離を詰めた結果、こんなふざけた鑑賞しかできなくなってしまった私ですが、一緒に見てくれる友人がそばにいる事をとても嬉しく思います。

 

睡蓮のポーズにまで付き合ってくれる友達、マジpriceless!!!

 

f:id:museology-tan:20180517210817j:image